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ブラザー軒

  小沢信男著「通り過ぎた人々」を読む。

  小沢が生前の高田渡に会っていたのは、高田が菅原克己の詩集の愛読者で、そのなかの一篇「ブラザー軒」に曲をつけて持ち歌としていた縁によるものであるらしい。1988年に亡くなった菅原を偲ぶ会「げんげ忌」を小沢が催し、それに高田が招待されて「ブラザー軒」を歌ったのだという。

  「東一番町 ブラザー軒 硝子簾がキラキラ波うち あたりいちめん氷を噛む音

  死んだおやじが入って来る 死んだ妹を連れて 氷水食べに ぼくのわきへ

  色あせたメリンスの着物 おできいっぱいつけた妹 

  ミルクセーキの音に びっくりしながら 細い脛だして 椅子にずり上がる

  外は濃藍色のたなばたの夜 肥ったおやじは 小さい妹をながめ 満足気に氷を噛み ひげを拭く

  妹は匙ですくう 白い氷のかけら ぼくも噛む 白い氷のかけら

  ふたりには声がない ふたりにはぼくが見えない おやじはひげを拭く 妹は氷をこぼす 

  簾はキラキラ 風鈴の音 あたりいちめん氷を噛む音

  死者ふたり つれだって帰る ぼくの前を 小さい妹がさきに立ち おやじはゆったりと

  東一番町 ブラザー軒 たなばたの夜 キラキラ波うつ 硝子簾の向うの闇に」

  高田が歌い終えると、どんなライブ会場も一瞬シィーンとなるという。小沢は「歌から、えもいえぬ気圧が発してくる。ひかえめな菅原克己と、飄々たる高田渡と、二つのマイナスを掛け合わせたら強烈なプラスになったような!」と書いている。トケオ

  Photo 酒場放浪記「吉祥寺いせや」の回に映る高田渡

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